たとえば平安に書物をするように
生粋のネットっ子なので、SNSが手放せない——その筈なのに、そっとあえてその喧騒から距離をとって、田舎町の駅に降りた時のように、ふうっと息をついて自分の世界だけに入る。
駅に着く頃には、車内にぎっしり乗っていた人たちはすっかりまばらになっている。
たとえ、賑やかな人が何組か一緒に降りても、私の帰路の途中でみんないなくなる。
顔を上げたら黒い空に黄金の月。黒い雲がどんより、日本画のよう。
時々空は青っぽく、宝石を散らしたみたいに星が並んでいて、自宅の前にまで来ると視界の殆どを星空だけにして、包んでくれる。
仕事を終えて、ややふらつき気味に人混みを歩く時、楽しそうだな、誰かといるのいいな、と寂しくて心がくさくさする。
でもこうして駅に降りたところで、私だけの世界が広がって、すっかりご機嫌になる。
日の下で、人と触れ合い大騒ぎして楽しむ私もちゃんといる。でも、一日の半分は、空想の中を歩き続けるひとりの私がいる。
そういう意味で、帰るまでに人がフェードアウトしていくような、家に着く頃には人影もなく、家の中も早々に寝静まっている生活は、私にはちょうどいいらしい。
Photo by Ganapathy Kumar on Unsplash
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